平成20年9月9日

「日本スポーツ体育健康科学学術連合」が平成20年9月に発足しました

 平成18年まで、日本学術会議には学術研究団体(以下学会と称す)の登録制度が設けられ、登録を認められた団体によって、日本学術会議内組織として研究連絡会議が構成され、その構成メンバーとして学術会議会員の選挙や科学研究費の審査委員会委員を推薦するなどの権利を有していました。しかし、日本学術会議の抜本的な組織改革が行われ、研究連絡会議は廃止されました。

 日本学術会議の登録学会は、新しい組織として、学術連合の必要性を感じるようになりました。日本学術会議としても、関連の分野ごとにまとまった組織が存在するが望ましいという意向を持つようになりました。こうした背景の下に、わが国のスポーツ、体育、健康を研究領域とする学会が参加する包括的な組織として、「日本スポーツ体育健康科学学術連合」が誕生しました。この学術連合は、旧来の日本学術会議の登録学会を中心メンバーとしていますが、一定の基準をみたす学術研究団体であれば、参加への門戸が広く開かれたかたちの組織とすること、旧来の学術会議登録メンバーと新しいメンバーは平等の立場で参加することが合意されています。スタート時には、34の学術研究団体が参加メンバーとなっています。

 この学術連合の最大の特徴は、これまで日本学術会議の中では、予防医学関連研究連絡協議会、体力科学関連研究連絡協議会、体育学スポーツ科学関連研究連絡協議会の3つの異なる領域の関連学会がひとつの組織にまとまって、活動を行なおうとすることにあります。それぞれの学会は、学問領域の独自性や、学会活動の独立性、他の学会とは異なるアイデンティティーを主張することによって成り立っていますので、学術連合という総合的な組織としてはまとまりにくい要素を持つことが普通です。しかし、このたびの学術連合の発足に当たっては、第20期の学術会議会員であった加賀谷淳子先生のリーダーシップの下、高松 薫先生(学術会議連携委員)を世話人とした「学術連合設立準備委員会」の精力的な連絡調整や参加学会の協力的な姿勢によって、本学術連合の発足を見ることが出来ました。

 こうした設立の経緯から、本学術連合は、数の上から一方に偏った考え方を取るのではなく、「3つの領域」、すなわち、「体育学・スポーツ科学」「体力科学」「予防医学」の各学問領域や個々の学会組織をお互いに尊重したかたちで活動を行なうという精神的基盤に成り立っていることを明言しておきたいと思います。

学術連合の設立によって、

  1. 政府や日本学術会議からの情報を各学会に速やかに伝達できること
  2. 学会相互の情報交換により、各学会に独自な研究および学際的研究のさらなる発展が期待できること
  3. 各学会および学術連合全体の研究成果を政府や社会に提言する拠点になること

などのスケールメリットが期待されます。活動の実際的運営については、さらに組織機能を整えつつ進めなければなりませんが、この学術連合が有効に機能することによって、学術研究の分野はもちろんのこと、子ども、青少年、壮年、高齢者に関わる様々な社会的課題、スポーツや身体活動、健康に関わる課題に関して、社会的な発言力と影響力を発揮できるようになると期待されます。

「日本スポーツ体育健康科学学術連合」の組織が、大きな働きを担うことが出来るように、会員の皆様とともに、新しい土壌に移植された大木に、元気な根を張らせ、若々しい葉を繁らせるように努力を続けてなければならないと思います。

初代代表 小林 寛道